緊急避妊ってなに?
コンドームが破損したり、つい避妊をせずに無防備な性行為をし後悔した時、またレイプ被害にあった女性を救済する手段のひとつとして、妊娠を防ぐのが緊急避妊です。アフターピル・事後避妊とも言われます。
ですが、緊急という響きのイメージからか深夜の救急外来に駆け込んでしまったり、性交後に急いで飲めば妊娠しないと勘違いするなど、間違った使用法で望まぬ妊娠・中絶が繰り返されていることも。
飲めば絶対妊娠回避できる魔法のお薬としてアテにした用法をしないためにも、私たちえる・おーしぃでは「緊急避妊」ではなく「応急避妊」という考え方を普及させたいと考えています。
ここでは英語での表現である「Emergency Contraception」の略「EC」と表記させていただきます。
現在実施されている主なEC方法
日本で2011年5月から発売開始になった緊急避妊薬・ノルレボ錠
国内で承認されているのはこの「ノルレボ錠」のみです。
アクシデント発生から72時間以内に服用するお薬で、婦人科で処方されます。
そのほかに、
中用量ピルを代用したヤッペ法(プラノバールを使用)
子宮内避妊器具(IUD)
ダナゾール
ミフェプリストン
といったものがあります。
費用は?
医療機関によります。
ノルレボの場合、17000円前後が相場かと思われます。
電話で金額確認をお勧めしますが、その際、
その金額がお薬代だけなのかどうかに注意してください。
診察費は別だったり、エコー代や検査費用も含まれていたり
カルテの有無(以前に受診しているかどうか)でも違ったり
いろんな基準がありますので、
総費用として問合せるのがいいでしょう。
首都圏の婦人科約50件の金額リストに掲載されていた例
■Aクリニック:3,000円のものと12,000円のものがある。相談のうえ決定
■Bクリニック:初診料3,000円と、緊急避妊費用は5,000円または12,000円。どちらになるかは医師の診断による
■Cクリニック:16,800円ですが、8,000円の場合もあります
■Dクリニック:15,000円と血液検査4,000円が必要
■Eクリニック:エコー検査込で15,000円
■F病院:初診料含む4万円
■G医院:5,000円です
■Hクリニック:診察料に詳細指導、OC1シート込で15,000円
2種類の金額を提示しているのは、安い方が中用量ピルで高い方がノルレボと思われます。
単純に金額比較だけなら、当然安い所に行きたくなりますが、確実性、安全性を考えれば1万円以上のノルレボと思しき所を選ぶのが賢明かと思います。
中絶とは違うの?
妊娠は精子と卵子が結びついた受精卵が着床したというところが定義です。ECは精子と卵子の出会うタイミングをずらすこと(排卵の抑制・遅延)によって妊娠を回避するのが主な作用になります。妊娠前に回避することですから、中絶とは全く違うものです。
また、ECの作用機序については、明確に解明されていない部分もあります。
非常に多く誤解されているのは、ホルモンの上昇・下降により出血させ、子宮内膜を剥がして着床を阻害するというものですが、ガイドラインや緊急避妊について研究されてる医師の解説で記載は10年以上前の文献を確認しても見られません。
あらかじめ用意しておけば安心?
ECとはあくまで臨時対応であって、通常の経口避妊薬のように計画的に妊娠を回避するものではありません。
避妊失敗率は最も良い条件でLNG単剤が0.4%、ヤッペ法が2%。必ずしも最良の条件でないことを考えると、それ以上の可能性で妊娠に至ることになります。
またECは、月経周期が乱れ排卵などの把握ができなくなるため繰り返しの利用には適していません。EC後の性行為有無で妊娠回避率に影響があるというWHOのデータ(※緊急避妊ガイドライン第4章・表3)もあります。ECによって数日間排卵の遅延が起こり、この遅れた排卵と性行為で妊娠に至ってしまう可能性が高まることを示唆しています。
妊娠を望んでいない場合は、EC薬を用意して性行為後に飲むのではなく、低用量ピルを服用しているほうがより確実に避妊ができ、体への負担も少なくて済みます。
ECよりOC!
「EC後の出血があるまで不安で後悔した」
「せっかく婦人科受診をしたから」
「ECの副作用がつらくて、二度とこんな思いはしたくない」
という人はとても多いです。
医師もEC後に低用量ピル=OCを提案することは多いです。
「ECからOCへ」という運動がそれです。
ほぼ100%の低用量ピルの避妊効果に比べれば、ECはあまりにも不安です。現時点で妊娠を希望していないなら、緊急避妊で受診した医療機関で、ぜひ今後の避妊法のひとつとして低用量ピルについて話だけでも聞いてみてはいかがでしょうか?
EC後のOC開始はどのタイミングから?
妊娠回避ができた結果、消退出血(生理のような出血)が起こります。低用量ピルは「月経初日から服用開始」するのが基本ですが、もしEC後の避妊として低用量ピルを選択するなら、この消退出血出血から低用量ピルを開始することができます。
但し、医師の指導があればそちらに従ってください。
緊急避妊避妊の翌日または12時間後から低用量ピルの服用開始という指導もあります。
現在緊急避妊のガイドラインでは、出血の前に避妊失敗であった場合、連続してECはしない指導になっているためです。
インターネットの情報では、「EC後の出血は生理ではないので、もう一度新たに生理を待つ」とあったり、コミュニティでも「EC後、出血がないのに低用量ピルを飲むよう言われたが、医師が間違っているのでは?」という相談があります。ECが生理周期のどのタイミングで行われたかによっても指導は違うので、自己判断で服用を誤らないよう、くれぐれもご注意ください。不安や疑問は、きちんと直接担当の医師やセカンドオピニオンを受けて確認しましょう。
OCでの代用
低用量ピルを服用していれば基本的に緊急避妊は必要ありませんが、たまたま飲み忘れていたタイミングや、手元に錠剤がある場合にヤッペ法を行う手段があります。
ノルレボという専用のお薬がファーストチョイスですから、推奨できる方法ではありませんが、知識として記載しておきます。
【アンジュ/トリキュラーで対応する場合】
黄色い錠剤を服用。性交後72時間以内に最初の4錠を、その12時間後に4錠を服用。
【マーベロンで対応する場合】
白い錠剤を服用。性交後72時間以内に最初の3錠を、その12時間後に3錠を服用。
【上記以外の低用量ピル】
ホルモンの種類が適切ではなく、排卵抑制量が不充分だったり血中半減期が短いため緊急避妊には向いていません。
いずれの方法も、実のところ
<参考資料>
「緊急避妊法の適正使用に関する指針」平成23年2月 日本産科婦人科学会編
「緊急避妊薬の承認とその一般用医薬品化に関する議論(1)」 梅澤彩
「緊急避妊法とプロゲスチン」北村邦夫 Hormone Frontier in Gynecology vol.7 No2 2010.6
<参考サイト>
知恵袋ノート